奥歯インプラントのデメリットまとめ|噛み合わせ・清掃性・費用面の注意点
奥歯を失った際の治療法としてインプラントを検討する方が増えています。
しかし、奥歯をインプラントにする治療には、メリットだけでなくデメリットやリスクも存在します。
主なデメリットとしては、下記のとおりです。
・治療費が高く、保険適用されない。
・治療完了まで数ヶ月〜1年かかる
・インプラント周囲炎のリスクがある
・骨が足りない場合は追加手術が必要
・外科手術による身体的な負担
・治療後も定期メンテナンスが必要
・全身状態によっては治療できないことがある
治療後に後悔しないためには、高額な費用や外科手術に伴う負担、インプラント周囲炎といったリスクを事前に理解しておくことが不可欠です。
また、従来のブリッジや入れ歯といった他の治療法との違いを正しく把握し、ご自身の希望や口の状態に合った選択をすることが重要です。
奥歯インプラントで後悔しないために知っておきたい7つのデメリット
奥歯のインプラントは、見た目や噛む機能を自然に回復できる優れた治療法です。
しかし、メリットばかりに注目してしまうと、後から「思っていたのと違う…」と後悔することもあります。
ここでは、インプラント治療の主なデメリットを7つにまとめて解説します。
治療費が高く、保険が適用されない
インプラント治療は自由診療のため、健康保険が使えません。
奥歯1本あたり約30〜50万円が一般的で、骨を増やす手術が必要な場合はさらに費用がかさみます。
高額ではありますが、医療費控除の対象になるため、確定申告で一部が戻る可能性もあります。
治療完了まで数ヶ月〜1年かかる
手術後、インプラントが骨としっかり結合するまでに時間がかかります(下顎で約3ヶ月、上顎で約6ヶ月)。
そのため、治療全体では半年〜1年ほど必要になることが多く、短期間で歯を入れたい方には負担に感じるかもしれません。
インプラント周囲炎のリスクがある
インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病のような炎症(インプラント周囲炎)が起こることがあります。
プラーク(歯垢)が原因で歯茎が腫れ、放置すると骨が溶けてインプラントが抜けてしまうケースも。
日々の丁寧な歯磨きと定期的なメンテナンスが欠かせません。
骨が足りない場合は追加手術が必要
歯を失ってから時間が経つと、顎の骨が痩せてインプラントを支えられなくなることがあります。
その場合は「骨造成手術(サイナスリフト・GBRなど)」が必要になり、費用や治療期間が増えます。
外科手術による身体的な負担
インプラントは外科手術を伴うため、術後に腫れや痛みが出ることがあります。
数日〜1週間で落ち着くことが多いですが、抜歯より負担が大きい場合もあります。
体力に不安がある方は、事前に担当医にしっかり相談を。
治療後も定期メンテナンスが必要
インプラントは「入れたら終わり」ではありません。
3〜6ヶ月ごとの歯科検診とプロのクリーニングが必要です。
ケアを怠るとインプラント周囲炎が進行し、せっかくの治療が台無しになることもあります。
全身状態によっては治療できないことがある
糖尿病・心疾患・骨粗しょう症の薬の服用など、全身の健康状態によっては手術が難しい場合があります。
また、喫煙者や妊娠中の方もリスクが高くなります。
治療前の問診で、持病や服薬について必ず申告しましょう。
奥歯のインプラント治療が難しいとされる4つの理由
奥歯のインプラント治療は、前歯に比べて難易度が高いと言われます。その理由は、骨や神経の位置、強い咬合力、そして治療部位の深さなど、複数の解剖学的要因が関係しているためです。ここでは、代表的な4つの理由を紹介します。
強い咬合力による負担が大きい
奥歯は噛む力が非常に強く、体重と同じほどの力がかかることもあります。
そのため、インプラントにかかる力を分散させる設計や噛み合わせの調整が非常に重要です。少しのズレでも、インプラント体や上部構造の破損、ネジの緩みなどのトラブルにつながる可能性があります。
上顎の骨が薄く、骨造成が必要になることがある
上顎の奥歯の上には「上顎洞」と呼ばれる空洞があり、骨の厚みが足りないケースが多く見られます。
この場合、「サイナスリフト」や「ソケットリフト」などの骨を増やす処置が必要となり、治療が複雑になります。
下顎には重要な神経が走っている
下の奥歯の近くには「下歯槽神経」という感覚神経が通っています。
この神経を傷つけないよう、CTによる三次元的な位置確認と精密な埋入計画が欠かせません。
安全性を確保するためには、歯科医師の高い診断力と技術力が求められます。
治療スペースが狭く、手技が難しい
奥歯は口の奥に位置しており、器具が届きにくく視野も限られます。
そのため、インプラントを正確な角度・位置に埋め込むのが難しくなります。
また、患者さんも長時間口を開け続ける負担があり、治療環境としても前歯より厳しくなります。
デメリットだけじゃない!奥歯をインプラントにする5つのメリット
奥歯のインプラント治療は難易度が高い一方で、それを上回る多くのメリットがあります。
「しっかり噛める」「見た目が自然」「他の歯を守れる」など、生活の質を高める効果がたくさんあります。ここでは、代表的な5つのメリットを紹介します。
しっかり噛めて食事が楽しめる
インプラントは顎の骨に直接固定されるため、入れ歯のようにずれたり動いたりすることがなく、硬い食べ物でもしっかり噛めます。
特に奥歯は「噛む力の要」なので、機能が戻ることで食事の満足度や栄養摂取も大きく向上します。
健康な歯を削らずに済む
ブリッジ治療では両隣の健康な歯を削る必要がありますが、インプラントは人工歯根を独立して埋め込むため、他の歯を傷つけることがありません。
「自分の歯をなるべく残したい」という方にとって、大きなメリットです。
顎の骨が痩せるのを防ぐ
歯を失うと、その部分の骨は刺激を失って徐々に痩せてしまいます。
しかし、インプラントは噛む力を骨に伝えるため、骨の吸収を防ぎ、顎の形や顔の輪郭の維持にも役立ちます。
将来的な見た目の老化予防にもつながります。
見た目が自然で口元がきれい
セラミックなどの素材を使用することで、隣の歯と見分けがつかない自然な仕上がりになります。
入れ歯のように金属のバネが見える心配もなく、笑ったときも自然です。
機能性だけでなく、審美面でも満足度の高い治療です。
違和感が少なく、お手入れも簡単
入れ歯のように取り外して洗う必要がなく、毎日の歯磨きでケアできます。
装着時の異物感やズレもないため、「自分の歯」と同じ感覚で快適に過ごせます。
発音もしやすく、見た目も気にならないため、日常生活のストレスが減ります。
【目的別】インプラント・ブリッジ・入れ歯、奥歯の治療法の選び方
奥歯を失ったときの治療法には、「インプラント」「ブリッジ」「部分入れ歯」の3つがあります。それぞれに特徴と向き・不向きがあり、どの治療が最適かは「何を重視するか」で変わります。
噛み心地・見た目を重視するなら「インプラント」
天然歯に近い噛み心地と美しさを求めるならインプラントがおすすめ。
顎の骨に直接固定するためしっかり噛め、見た目も自然。健康な歯を削らず、骨の吸収を防ぐ効果もあります。長期的にお口の健康を守りたい方に最適です。
費用・治療期間を抑えたいなら「ブリッジ」
手術が不要で短期間・比較的低コストで治療可能。ただし、支えとなる隣の健康な歯を削る必要があり、その歯の寿命を縮めるリスクがある点に注意が必要です。
手軽さと身体への負担の少なさを重視するなら「部分入れ歯」
歯を削らずに作製でき、保険適用で安価。身体への負担が少ない反面、噛む力が弱く、見た目や装着感に違和感を覚える場合があります。
奥歯のインプラント治療を成功させるための歯科医院選びのポイント
奥歯のインプラント治療は、前歯に比べて難易度が高く、歯科医師の経験や設備の差が結果に大きく影響します。
「失敗したくない」「長持ちさせたい」と考えるなら、医院選びがとても重要です。ここでは、安心して任せられる歯科医院を見極めるためのポイントを紹介します。
CT検査で正確に診断しているか
安全な治療のためには、CT撮影による精密な診断が欠かせません。
CTは骨の厚みや神経の位置を3Dで確認でき、より正確な治療計画を立てられます。
CT設備を導入しているか、またそれをもとにシミュレーションを行っているかを確認しましょう。
十分な説明と相談ができるか
信頼できる歯科医師は、メリットだけでなくリスクや他の治療法との比較も丁寧に説明します。
費用・期間・注意点などをわかりやすく伝え、患者の理解と同意を大切にしている医院を選ぶことが大切です。
不安や質問にしっかり答えてくれる姿勢もチェックポイントです。
奥歯のインプラント実績が豊富か
奥歯の治療には高度な技術が必要です。そのため、奥歯の症例経験が多い医院を選びましょう。
学会認定のインプラント専門医・指導医が在籍している医院や、症例写真を公開している医院は安心です。
豊富な経験があるほど、万が一のトラブルにも柔軟に対応できます。
保証制度とメンテナンス体制が整っているか
インプラントは治療後のケアが何より大切です。保証期間や定期メンテナンスの有無を事前に確認しましょう。
特に、インプラント周囲炎の予防のために、歯科衛生士による定期的なクリーニングや検診を行っている医院がおすすめです。
長期的にサポートしてくれる体制が整っている医院を選ぶと安心です。
まとめ
奥歯のインプラント治療は、天然歯に近い噛み心地を取り戻せるなど多くのメリットがある一方で、高額な費用、長い治療期間、外科手術のリスク、そしてインプラント周囲炎の可能性といったデメリットも存在します。
インプラントは人工物なので虫歯にはなりませんが、長期的に維持するためには日々のセルフケアと定期的なプロのメンテナンスが欠かせません。
治療法を選択する際は、これらのデメリットを十分に理解した上で、ブリッジや入れ歯といった他の選択肢の利点・欠点とも比較検討することが後悔しないための鍵となります。
記事監修 おのざと歯科院長 小野里 元気
■ 略歴
- 日本歯科大学新潟歯学部 卒業
■ 所属学会・資格
- 日本口腔インプラント学会 専門医
- 新潟再生歯学研究会 理事
- 日本先進歯科医療研究会 会員
- IDIA(International Dental Implant Association)指導医
- 日本臨床歯科CADCAM学会 会員
- 日本歯周病学会 会員
- 日本臨床歯周病学会 会員
- 群馬歯周治療研究会 会員
- デンツプライシロナ株式会社 ライブデモ講師